Kobe A.D. NXT 360 レビュー

待ってました!
…と言うか、そろそろNikeは”Kobe”ブランドか”Black Mamba”ブランドを起こしても良いと思うんですけど、どうなんでしょう?

はい、それはさておき!
今回は満を持してリリースされたKobeシリーズ最新作、”Kobe A.D. NXT 360”をレビューしてみようと思います。

「シューズの違いでプレイは変わる」を体感した自分にとっての原点で、最新かつ” Mamba Day”と言われたらもう買うしか無です。はい。

敢えてNXTと冠してリリースされたこのモデル、果たして。

カラーは、まだ1色しかリリースされてないのでもちろん”Mamba Day”
”Fade To Black”が関係あるか分かりませんが、ブラック貴重のアッパーにグラデーションの入ったアウトソールとホログラムなシース&スゥッシュ、インサートとヒールロゴのレッドが際立つカラーリングです。


まず何より手にして驚くアッパー(と言うかガワ)の薄さ。
本来補強が有る筈の爪先やアーチ横が逆に薄いメッシュという、なんという違和感。
写真じゃ分からなかったですけど、まさかインサートが透けてる赤だとは思いもしませんでした。本当に透けてる。
特にサイドビューの透け感たるや…。

インサートを抜いて2度目のびっくり。
底材までもFlywire+αで構成されており、そのメッシュ感と薄さ…。
薄いと思っていたKobe 8ですらちゃんと底材は打たれてましたし、トランスルーセントだったKobe 11でもTPU材質でそこそこの剛性感ありましたから、まさかガワを更にフレキシブルするとは想像すらしていませんでした。

360° Flyknitと銘打たれたアッパー。
繋ぎ目はイン・アウト共に中〜後足部に掛けて斜めに。
アッパーにおける補強はこの中〜後足部を覆うパーツとシュータン、あとシューレースホール付近のみ。本当にこれだけ。

アウトサイド。
ホログラムなスゥッシュの綺羅びやかさ。
インサイド。
インサイドは、後述のReactにおけるモーションフローをイメージした様な
グラーデーションなアウトソールが綺麗。
底を覗き込んでびっくり。
まさかここまで薄い構造になってるとは思いませんでした。





















大体同じ位の力で押してるんですけど、一目瞭然のグニャ感。

グニャリんちょ。
やたらめったら激しい”バスケットボール”という競技に「そんな装備で大丈夫か?」って本当に言いたくなるわけですけど、はっきりと「大丈夫だ。問題ない。」(by エルシャダイン)と言いきれる仕上がりになってました。(古…)

何故か?
これまでのKobeインサートモデルはガワの方に剛性を持たせる構造だったのに対し、今作はインサートに剛性を持たせる構造に変わりました。これって地味に凄いポイントだと自分は感じてます。
インサートで強度をコントロール出来る様になれば、ガワは極限まで”無”の状態にすることが出来るのでは無いかと。それにおけるマイルストーンがこのモデルなんじゃないかと自分は感じてるわけです。

そうなると、「自分に有ったインサートが見つかれば、ガワはなんでも良い!」につながるのでは無いかと。そうなると夢が広がリング!!!なわけで。

それはさておき、どの様にして強度問題をクリアしてるか具体的に言うと、まず第一に今までより更に高くなったインサートのサイドウォール。
所為、”バスタブ構造”と表現したくなる程深く足を包み込むインサート形状になりました。
この効果は想像容易いと思いますが、”薄い”と言った爪先やサイド部分もシッカリ巻き上がって足をサポートしているので、ガッチリ力を掛けてもこの部分でシッカリサポートされます。
ガワを見た時の心配は全て杞憂に代わる理由です。

第二に、REACTマテリアルとインサート側に組み込まれたプレート類。
Lunarlonより密度の高いREACTによるシッカリ感に加えて、中〜後足部にかけて搭載されたプレートにより反りに対してシッカリとした剛性感が生み出されてます。

深さの有るインサート。

Kobe 11のインサートと比較してここまで違う。
インサート裏側。
クリアなプレートが中〜後足部に掛けて配されてます。
…と、ここまで書いて、フィッティングに関して全く触れてませんでしたね;。

まずサイジングですが、今回のこのモデルはEPでは無くインターナショナルラストでリリースされました。
…とは言え、正直な事を言ってしまうと手持ちのKobe 11の方が遥かにタイト目に感じる程縦/横共に余裕のあるサイズ感。
特に縦幅に少し余裕有るので、決して入手性が良いとは言えないですけど、ハーフダウンまで試着した上でフィッティングされる事を強くオススメしたいです。

横幅に関して、特に気になるポイントはレースポイント最下段が思ったよりも絞まらないので、このあたりも踏まえてフィッティングして決めてもらいたい処。
自分はマイサイズで飛び込んで見たのですが、少し余裕有るフィット感でちょっと調整が必要なレベルに感じました。(ソックス2枚で良い感じ。1枚でも履けないことは無いですけど。)

幸いなのは、インサートモデルはファブリックなインソールモデルに比べて内部で滑り辛い事。
これのお陰で、少し大きめながらも前滑り等発生せずにプレイに集中出来ました。

前述の通り、アッパー側のヒールパッドも必要最低限。
しかし、インサートが巻き上がりウィング上にヒールを抑え込んでくれる&左右から挟むTPUフレームのおかげでヒールのブレも極めて少なく、抜け感に対してもシッカリとした抵抗を感じる事が出来ます。

ちなみに、シルエット的に「薄っ!!!」って思いましたけど、実際は底まで気になる程低くは有りませんでした。あくまで他のKobeシリーズレベルと感じます。

シューレースは細めで締め上げやすいものの、最下段の締め上げはもう一歩。
ヒール部分はインサートの巻き上がりにでシッカリと保持してくれるので、以外に不足無し。
インサート同様、ヒールカウンターも左右から挟むウィング形状。
今作で一番注目すべきはやはりこのインサートかと。

これまでのインサートはフルレングスLunarlon or +αのピンポイントZoom Air仕様でしたが、今作はLunarlon&REACTのハイブリッド構成。
”REACTに直に乗る”と言えるのはこのモデルが初になるかと。

同じフォーム系なので親和性は高いと思ってましたけど、実物触ってみてここまで違和感のが無い事に正直驚き。
繋ぎ目こそ接着感は多少有りますけど、手で触った感触の硬度感とか、本当にあまり差を感じられず。
ただ、履いて実感出来るREACTフォームの凄さ。
Lunarlonと比較して明らかに衝撃吸収と反発性のキャパが広い感じです。

例えばの一例ですけど、近代Kobeシリーズは基本的に殆どフラット〜後足部寄りのバランスで、Lunarlonが吸収特性な事もあってどうしても”前へ前へ”という動きがし辛い(加速させ辛い)感覚でしたが、今作はヒール側の着地エネルギーが前足部へ流れる感じで上手く推進力に変換される感覚。(なんと表現すれば良いか…。)

でもって耐久性が高いとか、本当に凄いマテリアルだなと…。(Lunarlonはどうしても使い込んでくと沈んでいってしまうので…。)
この感覚、自分の足が鈍感なだけかもしれませんが、低反発系のサーフェスと組み合わされた既存モデルでは決して感じられなかったなと。


インサートに彫り込まれた説明図解。
ハイブリッドの構成状態は本当にこの通りで、フォアフット部だけ少し内側寄りで中〜後足部にかけてセンターに配されたREACTフォーム。
フォアフット部分の接合部はインサイド側へ斜めにスライスされた形状で、内転を防ぐ狙いが有ると思ってます。

これのお陰といって過言無いと思いますけど、ユーロステップ等の左右切り返しステップは驚く程やり易いです。この感覚は他のシューズで感じたことが無い程。
これ、是非体感して欲しいレベルです。

…ただ、唯一このインサートにケチ付けたい部分が。
それは”他Kobeモデルと比べても明らかにアーチサポートが低い”事。
これのせいで足裏の密着感が今一歩なのが本当に悔やまれるところです。
(インサートモデルなので、下手にサポートインソール系が利用出来ないですし…。)
せっかくスウッシュによるサポートも有るのに、肝心のアーチ部分が密着しないとは此れ如何に。
「これが狙い!」いや、決してそんな事はないと思うんですよね。

サイドウォールに刻まれたREACTの文字。(読めない…。)
詳細をインサートに刻んで見るテスト。
抜く人or調べてる人位しか気付け無いっすよ…。
アウトソールはブレードによるクロスとドットの組み合わさった形状。…と表現すれば良いですかね?
力の掛かるポイント毎にパターンを切り替えていて、とても表現のし辛い処。

ラバーは比較的柔らか目。体感的にはKobe A.D./MidやKobe Xのラバー感に近い柔らかさ。
ただ、各ポイントが太いので、上記モデルより”一個一個”の接地面積は少し広めに取られてます。

トラクションは…もう一歩だけ粘りが欲しかった処。
少しでもホコリが付いてきてしまうと「ズズッ」とスライドしてしまう感じが有りました。
このモデルに関しては割りと回数掛けて調べていて、パターンも削れて良い感じに接地面積が広くなった状態まで持って行けてたんですが、それでもこの特性は変わらず。
…とまぁ、特別致命的にスリッピーというわけでもないので、個人的にはあまり気にしてないんですけど、個人的に兎にも角にも許し難いのは「このブツブツパターン、手で拭きずれぇぇぇ!」ってことでした。
このブツブツ、掌で擦るとちょっと刺激が強いんですよね…。
でもって、ブツブツが手に感じられる=接地面積が少ないわけで、実はもう少し密集しててくれればグリップも良かったのかなーと感じてしまったり。

さてもう1点。個人的にどうしても気になったポイント。
それはヒール周りが丸まった事。

ここ最近のKobeシリーズは後足部周りの安定性が本当に素晴らしかったんです。
Kobe 11から始まった中〜後足部にかけてのアウトリガー、あの接地面積拡大によるの安定感の向上は、特に後足部側に重心の来るKobeシリーズではドンピシャに嵌っていたソリューションだと思ったのですが、今作は敢えてそれを捨てて丸みを帯びた形状へ変更されました。
それぞれ一長一短有ると思いますし、個人の趣向により評価が違うポイントなのは重々承知なのですが、個人的には”あまり歓迎出来ない”でした。

ヒールを丸めた事で確かにどんなアングルでも攻める時の左右切り返し時に後足部のトラクションを活用出来るというメリットを感じることは出来るんですが、逆にそれはデメリットでも有りで、例えばディフェンス時にふいに後足部に荷重を載せなければいけないシチュエーションに設置面積の少なさによるグラつき・不安定感が個人的には悪目立ちしてしまったと感じました。
(特性を使い切れていない!と言われればそれまでなんですが…。)
「人間の踵は丸まっている。」確かにそう言われればそうなですが、「それが最適か?」と言われると決してそうでは無いと思うんですよね…。

アウトソール全体。
ブレードとドットの組み合わせパターン。
ポイント毎にパターンは違ってます。
丸みを帯びたヒール形状が個人的には一番難しかったポイント。
パターン拡大。
各パターンのクリアランスは広めに取られていて、全体的な接地面積は余り大きく無いなーと感じました。
重量は26.5cmで311g。ここ最近では特筆すべき軽量性だと思います。
Kobe 11 EMに匹敵する重量(307g)で、前作比40g程軽いです。(Kobe A.D. NXT:353g)


ちなみにな重量バランス。
インサート単体で109gで、
アッパーが201gでした。(あれ?1gどこいった…。)
ということで、以下の様に評価してみます。

フィット …  7/10
グリップ … 6/10
ベンチレーション … 10/10
クッション … 8/10
コスパ … 7/10
-----------------
ALL … 38/50

色々総合した上で、"極まった素足感"と表現してみようかと。

個人的に、Kobe 8までミッド&アウトソール&アッパーを削りながら、徐々に”素足感”に近づけていっていたと思ってます。

ただ、Kobe 8は諸々は薄くしすぎたが故の弊害として圧倒的に剛性が不足していた事は否めず。(インサートの硬さに負けるガワ群…。)

これを今後どう昇華させるか?と思った矢先、Kobe自身の怪我(アキレス腱断裂)によりそれ以降のKobeシリーズはKobeのプレイをサポートする為にアッパー&ソール周りの増強へシフトし、”素足感”から遠ざかざるを得ませんでした。

Kobeの回復に併せて、満を持してリリースされたKobe 11から改めてローカットオンリー&素足感重視の方針へ回帰したものの、Kobeは現役を引退。

引退後、Kobe A.D.シリーズとしてリリースされた初作はこの流れを汲んでいるものと思ってましたが実際はそういう訳では無く、その次にリリースされた”NXT”と冠したモデルがインサート構造を引き継ぎ、現役時代に目指していた”素足感の追求”を継承しているのかなと。

そういった意味で今作を見てみると、極限まで削られたアッパー周りと足の動きにとてもニュートラルなインサート、人間の踵に近い丸まったアウトソール構造の組み合わせは現時点でリリースされてるシューズの中で間違いなく”一番素足に近い”と表現して過言無いかと。

…ただ、「これが完璧か?」と言われると「必ずしもそうでは無いのかな…」というのが正直なところなのかなと。
確かに、個人的にはKobeシリーズのプロダクトポリシーの”素足感”に感銘を受ける部分は大いに有って、だからこそKobeシリーズを継続して履いてきた訳ですが今作を見て「あれ?」となってしまった感は正直否めないです。
ふと我に返って、「素足のままバスケをプレイできますか?」と言われると、もちろん答えは「No」な訳で、動きに対してある程度フォロー・サポートしてくれる”構造”はやはり必要なんだなと。
そういった意味で、”バスケットボールをプレイするフットウェアでどちらが優位か?”と問うた時のアンサーとしては「これまでリリースされたKobeシリーズの方が上」というのが個人的な最終結論と相成りました。

同じアンサーになったかどうかはわからないですが、Kobeシリーズを選択して履き続けてるD.DeRozanも結局のところ過去モデルをチョイスしてるのはそういう事なのかもしれないなーと。

という戯言を並び立てた長い後書きになってしまいました…。
決して悪いシューズとしたい訳ではないですけど…。

コメント

  1. いつも詳しいレビュー有難うございます。360レビュー待ってました。
    かなり革新的で値段も値段なのでどうするか迷っていたのですが、とても参考になりました。
    これからもよろしくお願いします。

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    1. バレーバスケさん
      いつもコメントありがとうございます!

      今作、バレーの方も結構良さそうですよ!w
      REACTのフィーリング、直で踏み込むとこんなにも凄いものと思いませんでした。
      もし機会あれば、是非試してみてください!

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  2. ぜひ試してみたいと思います、とは言うものの人気商品で店頭で試履が出来ないのが厳しいところです。別カラーでも出るでしょうからそれを待ってみることにします。
    ところでkd11が出るようですね。フルレングスズームエアーとリアクトの融合です。
    どんな感じになるのか楽しみです。kdシリーズは個性が強くて彼自身靴を緩く履くタイプなのか試合中によく脱げるイメージが強くて手を出しにくいですが、今回は興味ありありです。

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    1. バレーバスケさん

      実は自分も興味津々ですw。
      個人的にKDシリーズのラストが有っているというのも有りますし、何より新しくなったクッション周りが気になってます。
      個人的にはこれまでのZoomAirの乗り味も嫌いじゃないんですけど、今作でどういう風に変更したのかと言うのはやはり気になるところです。

      確かにKDはよく脱げてますよね…w。
      でも実物履いてきた中で、ちゃんと締めてれば脱げてしまう不安と言うのは余り感じ無かったので、やはり「履き方」なんだろうなーと思ってます。
      もし機会ありましたら是非こちらも試してみてください!
      個人的には結構お気にい入りシリーズだったりしますw

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